■お手軽ステム打ち換え


掲示板で毎度毎度お世話になってるせお先生から、

ステム入れ替えちくり〜

との御依頼。
白井内燃機工業久々のお客様である。
工賃として、最近ネタが不足気味のこのページの

貴重なネタ

として掲載することにした。

そのブツとはミニトレのステムでありまして、 ミニトレにYSR50のフロント周りを移植するんだけど、 YSRのでステムパイプが短いんだな。
ただし違うのはステムパイプの長さだけで、他のベアリング寸法やトップブリッジの取りつけネジ寸法などは完全に一緒。
YSRのステムが長いのであれば、

途中でブッタ切る

くらいの無謀な事は俺もせおさんもやるだろう。
強度の問題は「神の声」を聞けばOK。こんなモンだろうと・・・
しかし短いモノを延ばすのはそう簡単ではない。
てな訳でステムパイプの打ち替えを施そうという訳です。

てな訳で、せおさんから小包が届いた。
梱包を解いてみると、箱の裏にはせおさん直筆でミニトレ完成予想図が描かれていた。
ほほう、こう来るかぁ・・・うふふふふ
俺も早くRZRこしらえてミニトレやらんとなぁ。
緩衝材に入れた新聞紙をほじくり出して行くと・・・出てきました。
こ汚い3つ又が・・・(^^;

左がミニトレ、右がYSRの3つ又。
ベアリングは送る前に外しといてねとお願いしておいた。
要はこの2つのステムパイプをとっ外して入れ替えて溶接するだけの事。
しかし寸法がズレてしまってはいけないので、キチンと採寸しておこう。

こんなお道具

清書が面倒だからそのままスキャンだ。
見ての通り(わからんというのは却下)、長さこそ違えどベアリングの位置などは完全に一緒。
本当にミニトレのステムパイプを抜き去り、YSRのを叩き込むだけでOK。
なにせ一度自分のミニトレでやってる作業だから気楽なモンだ。
早速ステムパイプ抜き取り作業に入ろう。

まずは裏の溶接の波を削り取ってしまう。
まあ基本ですね。
そして手始めにミニトレの3つ又からステムパイプを抜き取りましょう。
こいつのステムパイプを使うので、出来るだけ無傷で取り出さねばならん。

この際ステム側は諦めて、ガンガン削って行きましょう。

漢は黙ってサンダー1本

で勝負だ。
しばらく削っていると、溶接で熔けていない、ステムとステムパイプの境目に到達する。
写真では撮れなかったけど、鉄の色の中に1本黒い線が走る。
これが溶接が外れた目印。
全周にこの線を出していくようにする。

こっちには線が映ってる。
とにかくガンガン掘り進め!!

ようやく全周掘り出せた。
次にバイスに挟み、ハンマーで一撃入れると・・・

ほれ、外れた。
CRCなんかを差して、手でグリグリ捻れば外れてしまう。
手で無理ならハンマーで叩いて行けば良いし、 それでもダメならガスバーナーで炙ればスポンと抜けるだろう。
よく雑誌のカスタム記事で入れ知恵してる向きには

プレスが必要

だと思ってる方が多いようだが、アルミステムに鉄のステムパイプを圧入してるなら必要だが、 両方が鉄で、

ましてや原チャリ

ならこの程度で抜けてしまうのである。
こうやってミニトレのステムパイプ摘出無事に完了。

次はYSRのステムを摘出する。
今度はステムパイプを捨ててステムを無傷で取り出す。
だからこうなる。

ステムパイプの内側から斜めに掘り進む。
この場合はサンダーに使い古した小さな砥石を入れればやり易い。
無論リュータに超硬バーがある方はそっちので早く確実に摘出出来る。

こうやって両3つ又の分解が完了。
おもむろにミニトレのステムパイプをYSRのステムに挿入してみる。

おっとっと、心配しなくてもどちらも初めてではないので、入念な前儀は不用だ。(何がや
ここでハンマーでコツコツと少しづつ入れて、先に採寸した通りに寸法を合わせてやる。
アッパーベアリングの摺動部の境を、ロアーベアリングの座面から156.5ミリ、 全長で189ミリに合わせてやればOKだ。
しかし丁度合わせたつもりが実は長かったりすると、いくらナットを締めても

ベアリングが締まってくれない

というマヌケな事態も起こりかねないので、1ミリ程深く打ち込んでおく。
多少短い分には問題無いからね。

ここまで来たら、ステムパイプが真っ直ぐ垂直に立っているかをチェック。
コレが歪んでいると、当然ステムベアリングに無理が掛かって、 ハンドルがスムーズに切れなくなるし、最悪真っ直ぐ走らないなんてことにもなる。
確認の方法は?
イチバン簡単なのは、溶接しない状態でフォークとトップブリッジを使って組んでしまう。
これはせおさん案であります。
しかし、仕事の昼休みの合間に自分のミニトレバラしてる暇は無いというか、 俺のミニトレのYSRフォークはどうやら

曲がっている

らしいのでこの方法はアテにならない。(^^;
よって、差し金や直尺でチェックする。

もっこり

これで円周の様々な位置から座面との距離を測って、同じ長さなら垂直って事。
まあどれほどアテになるか自信はないですが。(^^;
そして神の声が聞こえた。

よし!今だ!!固定しろ!!!

どうやら垂直が出たらしい。
裏側から見るとこんな感じ

ここに溶接を盛って固定してあげれば完成だ。
素直にアーク溶接で片付けてしまえば良いのだが、これでは一応今回目論んでいた

誰でも出来るステム打ち換え

の趣旨から外れてしまう。
ここで以前から試して見たかった溶接を試してみよう。

ブースターケーブルとバッテリー

で行う溶接である。

手持ちのブースターケーブル2セットで、手近にあった軽四のバッテリー3コを直列に繋いだだけ。
後は対象物にブースターケーブルでアースし、+側に溶接棒を咥えれば即席溶接機の完成。
と行きたかったのだが、このブースターケーブルのクリップの形状が良く無く、 溶接棒を咥えられなかった。
仕方ないので+側だけホンモノの溶接機のクリップを用意した。

こんなモンで溶接出来るのかと思うだろうが・・・

良い子は溶接面を使いましょう。

出来てしまうのである。
交流アーク溶接機に比べて、最初のアークの飛びが断然に良い。
コレ、結構素人でも簡単にイケるかもしんない。
そしてもう1つ、溶接時の音が異様に静か。
交流だとバチバチバチと盛大な音を出すのだが、直流だとシュシュシュって感じで熔けて行く。
これにはかなり驚き。

とは言っても実際には甘い事ばかりでなく、今回は溶接対象が

鉄の塊

なので、アークを持続出来ない・・・要するに温度=電流が足りないんだな。
まあ使い古しの軽四のバッテリーだし、バッテリーのジョイントに使ってるブースターケーブルが細いので、かなりのドロップがあると思う。
60クラスのもう少し大きなバッテリーと、ちゃんとしたケーブルで製作すれば十分実用になるだろうし、今の状態でも溶接棒をもう少し細いモノ・・・2.6ミリ辺りで、 フレームの加工や小物の製作なら十分過ぎる程実用になるでしょう。
これは後にもう少しキッチリした物を作って発表したいと思います。

そうそう、わざわざバッテリー買ってやらなくても、 100Vの溶接機買えばいいじゃないかと思うかもしれませんが、 世の中そうは甘くは無い。
100V溶接機は本当に馬力が無いのだ。
精々2〜3ミリ程度の鉄板くらいしか溶接出来ないし、 最初のアークを出すのが非常に難しい。
ましてや今回のようなステムのような厚物だとアークすら出せないだろう。
てな訳でバッテリー溶接機をオススメしてみようという次第。

で、バッテリー溶接は納得したので、時間の関係でホンモノのアーク溶接機で仕事を片付けてしまう。(卑怯
まずは極力歪ませないように、対角に4点素早く溶接する。
更におまけに4点点付けしてから本チャンの溶接で肉を盛って行く。
冷ましてからスポットブラスターでフラックスを除去。
こんな感じ。

ちょっとカッコ悪いけど要は頑丈についてればいいのだ。
あとはにえさん謹製謎のサビ取り液、通称「にえ汁」でサビを処理。
そしてサビ止め塗料を塗って完成。

あとは箱に詰めて送り返すだけさ。
コレを書いている現在、せおさんのミニトレにキチンとハマり、 あとはフォークを待つのみだそうだ。
ああ、無事にハマって良かった・・・

(ココから後日追記です。)

後日、せおさんから大変なお礼を頂きました。
それはなんと!

酒!

であります。
九州漢^H男児が送る酒といえば焼酎!
どうやらせおさん家のトコの地酒のようであります。
以前は焼酎を嗜なまなかった俺でありますが、今回飲ってみると・・・イケるぢゃん。
とりあえずウーロン茶割りに梅のお湯割り、コーラ割りと色々楽しんでみました。
てな訳で

せおさん御馳走様でした!!

んで、後日の写真も頂きました。

題:ダートレーサー

フレーム部

おお、随分進んでやんの。(^^;
YSRの外装がエラいキレイにハマってるなぁ。
俺のこさえた3つ又も入っとる入っとる。
確かYSR80のエンジンだったかと記憶してるけど、なんかせおさんらしい

イカれ具合が足りない

なぁ。
と思ってたらあーた。

せおさんの承諾がまだ出ていないので詳細は明かせませんが、

アンタ真剣か?

というような状態になっております。
やっぱこうでないといかんなぁ。

てな訳で今回のご依頼は終了〜


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